複業人材と企業をつなぐ共創プロジェクト、始動。

2021.11.27 柴田 明/まちのタレント(複業人材)

「最初は、この取組が会社の業務にどう結びつくのか、わかりませんでした」
「なんでわざわざこんな話し合いをするんだろうとは思ってました」

前半3ヵ月を振り返って、ノーブルトレーダースの皆さんは笑いながらそう話してくれました。ゴールへの道筋が見えないままスタートした、まちのタレントバンクとの6ヵ月間のプロジェクト。社内では、若手社員を参加させることに対して、各部署からの反対意見も少なからずあったそうです。

折り返し地点となる10月末に、代表取締役社長 辻 典之さん、経営企画室 辻本 隆さん、輸出入部 山本 佳凛さんにお話を伺いました。

プロジェクトについて

[テーマ]

「自社ブランド開発のチームづくり」
・チームビルディング研修
・ブランド開発伴走 / コーチング

[メンバー]

ノーブルトレーダース株式会社 × 大槻 彦吾・仲田 匡志
大槻 彦吾|ヒューマンフォーラム株式会社 人材育成部部長
仲田 匡志|株式会社MIYACO 人材・教育事業 / 地方創生事業

[背景]

「ブランディングをしたい」から話が展開していって……
・主体的にチャレンジする人が少ない
・会社のビジョンや提供価値が言語化されていない

遠回りに見えるプロジェクトに、皆で挑もうと決断できたのはなぜか。

──先日、第5回のミーティングがありましたが、今までで一番盛り上がりましたね。

辻本

大きく進んだという手応えがありました。最初は「類人猿診断」をしたり、人生を振り返ってライフラインチャートを書いたり……個人の深掘りからスタートしたので、この取り組みがブランディングにどうつながるのか、正直よくわからなかったんですけど。

辻社長

それぞれが自分の言葉で会社を語ってくれて、今までにない議論ができました。どんどん皆が自分の思いを発言してくれるようになって、自然と会社のビジョンやバリューを話し合う流れになっていたんですよね。うれしいなーってしみじみ思っていました。

山本

基本的に話し合いで進んでいくので、行き詰まるタイミングも何度かありましたけど、進行役の仲田さんがうまく議論をサポートしてくれました。意見がまとまらなくて皆がちょっと不安になった時に、新しい視点や考え方のヒントをくださるんです。社内のメンバーだけで話していたら、あそこまでたどり着けなかったと思います。

辻社長

遠回りやでっていうことは、最初に皆にも言ったんですよ。でも、とにかくやりますと。プロジェクトが始まる前に、本質的な課題はどこにあるのか、何をするべきか、何度も話し合って内容のすり合わせをしてくださったので、僕自身は迷いはありませんでした。一般的なビジネスの関係とは全然違いますね。仕事を依頼したというより、会社の中に入りこんで一緒に考えてもらっている感覚です。

会社にとっての「不快感情」を考えることで、大切なものが見えてきた。

辻本

会社の価値観を考えていく段階になって、「会社は売上が下がって不快な思いをしています。なぜ不快なのでしょう?」という問いがすごく難しかったです。個人ではなく、会社としての不快感情を考えるってどういうことなんだろうって。でも、それぞれの意見を聞いていくと共通している部分が多いことがわかりました。売上そのものが理由じゃないはずだと、皆が思っていたんです。

──「不快」について話すとなると、普段は触れにくいような話題も出てきますよね。どこまで本音を言っていいのか、という迷いもあったのでしょうか?

山本

同じことを社長と1対1での面談で聞かれたら、言いにくいですね……。でも、あの場では、多少ネガティブなことを言ったとしても、皆が意図を汲み取ってくれるだろうと思えました。逆に、ここで言わないと意味がないなと。会社の価値観について踏み込んだ議論ができたのは、前半の個人に焦点を当てた時間があったからだと感じます。これまでの取組とゴールとをつなぐ道筋が見えた瞬間でした。

辻社長

正直な意見を言ってくれたと思います。会社の課題としてわかっているつもりでいたことも、改めてメンバーの口から聞くと、響きますよね。やっぱりそうか……って。そうやっていろいろな話をすることで、今までなんとなくふわっと存在していたものが、メンバーの共通認識として形になってきています。

私がここで働く意味を、見つけたい。

──プロジェクトを進める中で、ご自身にとっての新しい発見はありましたか?

辻本

自分自身の好き嫌いとかやりたいことを、仕事に持ち込んでもいいのかなと思うようになりました。今までは、与えられた目の前の仕事を精一杯やればいいという意識で、それはそれで満足感はあって。でも、もう一歩踏み込んで自分の幸せを加味した意思決定をしていいって、会社側から言ってもらったように感じました。僕はワインが好きなので、ワイングラスの商品開発やブランディングにもっと関わっていきたいです。

山本

私がここで働く意味を考えるようになったこと……でしょうか。まだはっきりとした答えはないのですが、残り3ヵ月で見つけたいです。それから、このプロジェクトを通して、今までほとんど関わることのなかった他部署のメンバーのことを、かなり深く知ることができました。お互いの人となりがわかると、仕事をする中で意見がぶつかったとしても、いい解決方法を見つけられると思うんです。腹を立てたり落ち込んだりする前に、「◯◯さんはなんでこう言ってるんだろう?」って考えられるようになるので。

辻社長

僕も、気持ちが楽になりました。いい意味でね。4年前に代表というポジションになって、全て自分が決めないといけないプレッシャーもありましたし、弱いところは見せたらあかんという意識があって。会社について一緒に考える時間を経て、会社のメンバーと本当の仲間になれている感じがします。
このプロジェクトの中で起こっている変化が、社内に広がっていってほしい。そのための環境を作っていきたいです。楽しく仕事してほしいんですよ。文化祭の前日みたいな雰囲気の会社がいいなと思っていて。フラットな関係で、それぞれが自分のやるべきことを一生懸命やって、一緒に創りあげていくような。会議をわざわざ設定しなくても、井戸端会議でものごとが進んでいくのが理想です。

辻本

それぞれの現場で判断基準となる、共通のモノサシができるといいですよね。仕事で何か迷った時、いつでも立ち戻れるような。

辻社長

そうですね。今作っている人事評価制度も、そこに合わせていこうと考えています。店舗作りや仕入れ、お客様とのコミュニケーションなど、全ての軸になるものができてきている感触があります。

社外の新しい仲間と一緒に働くことで、視野が広がりました。

──ここからは、まちのタレント(複業人材)の大槻さん・仲田さんにお話を聞いていきます。まちのタレントバンクでは、お二人が提供する側、企業が受け取る側という一方向の関係ではなく、互いに成長し合えるプロジェクトをめざしています。ここまでを振り返って、率直な感想を聞かせていただきたいです!

大槻

まず、仲田くんと一緒に働けたことはすごくいい経験になっています。自分の活かされ方というか……自分がどう役に立てるのか、新しいかたちが見えた。これからはおそらく、働き方がますます流動的になっていきます。働く場所によって求められる力は違うから、今いる組織で活かせないスキルがほかのところで輝くなんてことはたくさんあるはず。なので、まちのタレントバンクが描く社会像にはとても共感します。

仲田

楽しさといい緊張感が共存していますよね。ゴールのない問いに皆で向き合って、ノルマや納品物が決まっているわけじゃないけど、すごく期待してもらっているのはひしひしと感じます。まず大槻さんのワークショップで一人ひとりの価値観を深掘りして、その後に僕が皆さんと会社としての話を展開しているんですけど、このペアだからこその価値を発揮できている感覚があります。

──「色んな人が関わらないとできないこと」を実現していきたいので、お二人とノーブルトレーダースの皆さんとのダイナミックな動きを横で見させてもらって、感動しています。

仲田

オーダーされたものを提供するのではなく、「何をするか」から一緒に創っていってるので、関わる全員が主体性を持って動かないと、何も進まないんです。まだ形のないものを信じてここまで進んで来られたのは、京都信用金庫さんが築いてこられた地域との信頼関係と京信人材バンクの皆さんの真摯な姿勢のおかげです。僕ら二人だけがいきなり現れたら、一緒にやりましょうとは絶対ならないですから(笑)。関係性から始まって、その関係性をさらに広げていく取組なんだなと、実際に参加して感じています。

大槻

そうだね。信頼関係という土台の上で、のびのびとチャレンジさせてもらっています。ブランディングって経営判断にも大きく関わるから、覚悟が必要なんですよ。中途半端にやると逆効果になる場合もあります。オープンに議論するとか、心理的安全性の高い場を作るとか言うのは簡単ですが、個人にも組織も大なり小なり過去の辛い経験があって、そのハードルを超えるのは決して楽なことではないので。僕は、働くことと生きることはイコールだと思っています。その実感が持てると、周りの人を幸せにする仕事ができるんじゃないかと。ノーブルトレーダースさんの事業を通じて幸せになる人が増えていくことが、僕にとっては一番うれしいです。

──ありがとうございました。ここからの展開も楽しみです。3ヵ月後に、またお話を伺わせてください。

まちのタレントバンクは、まだ動き出したばかり。何の実績もない私たちとプロジェクトに挑戦してくれた皆さんには、感謝しかありません。手探りで進んできた3ヵ月間でしたが、予想をはるかに超えた手応えを感じています。

まちのタレントバンクは、関係性をつくるビジネスです。プロジェクトの中で起こっていることを、会社やチームの内側に留めるのではなく、地域に開いていくことを心がけています。

大槻さん・仲田さんのお友達がノーブルトレーダースの食器に興味を持つ。
ノーブルトレーダースの社員が、大槻さん・仲田さんが所属する会社のファンになる。
この記事を読んだ人が、ノーブルトレーダースのお店に行ってくれる。

そんな小さなつながりがたくさん生まれることで、誰かのチャレンジを応援する気持ちがまちに増えていきます。「互いに頼り合え、チャレンジしやすい社会」へ。一歩ずつ進んでいきたいと思います。
 

聞き手:矢野 凌祐・新田 廉(京信人材バンク 共同代表)
文・写真:柴田 明/まちのタレント(複業人材)

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